※この記事は自殺について扱います。フラッシュバックの危険がある方、自死遺族の方、何らかの精神疾患をお持ちの方は閲覧にご注意ください。
今からちょうど2年程前の話。
私が元々住んでいたド田舎の知り合いのAさんが自殺で亡くなりました。うつ病でした。
Aさんの年は確か40後半くらいで、母体の大きい会社でチェーン店が沢山有る飲食店の店長。
後々聞いた話では、自分の店(某商業施設内にあった)がその商業施設の改装によって閉店。同じ系列の店で店長になるも自宅から店が遠く通勤に2時間以上掛かる上、売上が伸びず本部から圧力を掛けられ、新しい店での従業員ともうまくいかない、と板挟みで様々な問題があってそのうち家から一歩も動けなくなったそう。
その年、子供が2人居たAさんの下の子供が高卒で就職し家系にも余裕があるからと、優しく美人だと地元で評判だったAさんの奥さんはAさんに休職を勧めたものの会社からは「休職するなら辞めろ」と言われAさんはそのまま退職。奥さんは「私が稼げるから大丈夫よ」と手芸品を売っていました。
精神科へ掛かり1年療養したものの生真面目なAさんは就職の焦りと、そして田舎特有の「あいつは今働いていない」「うつらしい」という噂に苦しめられて再就職を急ぎました。年齢的に再就職が厳しかったAさん。奥さんには急ぐことは無いと言われていたものの焦っていました。田舎から通える会社は限られていたものの数十社と中途採用で応募をしたらしいのだけど全て不採用。
そしてAさんの子どもの1人が22歳の誕生日を迎えた日、自宅で首を吊って亡くなりました。
Dr.コトー診療所の一期か二期か忘れましたが、確か西山茉莉子(もしかしたら彩佳さんだったかも)が「島の噂は光ファイバーより早い」って言ってました。田舎も全くその通りです。田舎の噂は光ファイバーより早いのです。
私は引っ越していて知らなかったけど、休み始めたその日からその地域の中では「Aはうつだ」と知れ渡っていたようです。次第に噂はエスカレートし、「嫁さんに暴力振るっているらしい」等と嘘まで出まわるようになりました。田舎の人達はそれが本人を苦しめていると分からないのです。
私だってそうでした。うつになると、引きこもりになったと噂され更にはうつの原因でもあった祖父母(父親と祖父母に虐待をされていた事も一因だったので)は世間体を気にしてそのまま生きているくらいならどこかで野垂れ死ねと言ったものです。
さてAさんが亡くなると、首吊りで死んだだの薬を大量に飲んで(ODして)死んだだのと田舎中に話は駆け巡って、更に心無い言葉を言い出す人が出てきました。
「Aは仕事の下手な奴だったんだろ。能力のない奴が店長なんかやって、偉くなるには上と下の板挟みくらい経験しないとダメだ。本当に自殺して逃げようなんざ根性無しだ」
そう言ったそうです。今まで言わなかっただけで、そういう雰囲気が地域に漂っていたのかもしれません。Aさんはそれを感じ取っていて焦っていたんでしょう。
田舎の人は精神疾患の人に理解がありません。勿論どこの田舎もと言うことではないし、全員が全員では無いです。でも、そういう人も多いのです。
田舎にはどこか精神疾患の人間を排除しようとします。面白おかしく自分たちで噂を作って、本人が苦しんでいてもお構いなし。というか、苦しんでいる事にも気付いていないんでしょう。ひどい話です。
Aさんは子供の誕生日に亡くなったという話をしましたが、個人的にはきっと自分の事を忘れてほしくなかったんだろうなと考えます。私にも分かるだなんておこがましいですが、今まで散々辛くて苦しくて寂しい思いをしてきたのだから、死ぬ時くらい・死んだ後も誰かに覚えてて欲しいと確かに思います。
デビットリスターという心理学者が名付けた「バースデーブルー」という現象があって、これは本人の誕生日の前後1ヶ月に自殺する人が多いという研究結果から言われています。が、本人だけでなく家族や親しい友人の誕生日もかなり注意したほうが良いんじゃないかと個人的には思います。
私は無責任に自殺はいけない事だとは言えないし、自分も常日頃から死にたい死にたいと思っているので自殺する人には何かを言う資格はありません。
とにかく言えるのはAさんが亡くなったと聞いて、結構長い間私のメンタルには響きました。つまり影響がありました。何年も会ってない人なのに、です。
助けてくれる人は本当に見つからないものです。世間って冷たいです。みんな自分のことでいっぱいいっぱい。社会に余裕が無いのも原因なんでしょうね。きっと。